『砂漠でサーモン・フィッシング』で、砂漠のように乾いた都会の心を癒してみては?

 『砂漠でサーモン・フィッシング』とは、タイトルがユニークではありませんか。
そもそも、砂漠にサケなんかいるんですかね?

「いったい何が起こるんだろう」感が伝わってきませんか? このタイトルに惹かれますね。

ということで、今回はなんとも不思議なタイトルの『砂漠でサーモン・フィッシング』について紹介したいと思います。

 

そもそも、砂漠で鮭釣りってどういうこと?

これって、いつぞや日本でも一大ブームとなった「食べるラー油」と同じ矛盾語法(オキシモロン)という言葉の使い方で、本来、「食べる」イメージではない、「飲む」イメージの「ラー油」に対して、あえて矛盾するイメージの「食べる」をぶつけて冒険しているのと同じです。でも、当たり前ですが、映画はラー油とはまったく関係ありません(笑)

文字通り、砂漠でサケ釣りをするというとんでもない話です。(えっ、オチになってない・・・)

 

『ショコラ』のハルストレム監督の安心印

監督は、世界中に忠犬ハチ公の名前を知らしめてくれた『HACHI 約束の犬』や、また不思議なチョコレートの話の『ショコラ』など、抒情的な良作で有名なスウェーデンのラッセ・ハルストレム監督なので、安心して観ていられます。

さあ、大船に乗った気持ちでサーモン・フィッシングの「航海」に出ましょう。

事の発端は一通のメール

 イギリスの水産関係の御用学者であるフレッドこと、アルフレッド・ジョーンズは、ある投資会社のコンサルタントであるハリエット・チェトウォド=タルボットというちょっと長い名前の女性からのメールを受けとります。

彼女のメールは、「イエメンでサケ釣りをするというプロジェクトがあるのですが、それについてアドバイスをいただきたい」という趣旨だったのです。

しかも、そのプロジェクトにはイエメンの族長という大富豪が資金提供しているという。

そんな突拍子もないプロジェクトの発案者が、大金がうなる石油の大富豪ともなれば、がぜん実現性を帯びてくる話です。

普通のビジネスマンなら、荒唐無稽な話ではあるけれど、たとえ失敗してもビジネスチャンスだと、ウの目タカの目になる話です。

ところが、フレッドは根っからの学者気質、「実現不可能」と一笑に付してしまいます。もちろん、断ったのは、「イエメンはサケが生育するには適した環境ではない」というお堅い学者らしい理由からでした。

舞台はなぜかスコットランドのお城へ

 この学者肌のフレッドを演じるユアン・マクレガーについては今さら言うまでもないと思いますが、大富豪の代理人役のハリエットは『ヴィクトリア女王 世紀の愛』で女王を演じたイギリスを代表する女優のエミリー・ブラント。これまた大船です。しかも、2隻の。

ばかげたプロジェクトだと言い張るフレッドに対して、これまた一歩も引かない理論派のハリエットは、一度、スコットランドのお城を別荘を持つ大富豪のムハンマドに会ってくれないかと頑固なフレッドに揺さぶりをかけます。

ところが、このムハンマドという人物がサケ釣りに対するこだわりがフレッドに一歩もひけをとらないというなかなかの人物で、フレッドが考案したフライ・フィッシングの〝ウーリー・ジョーンズ〟というフライのすばらしさを持ち上げるもので、たまらずフレッドのかたくな心は一気に氷解。逆にムハンマドの非西洋的な価値観に心酔してしまいます。

頓挫寸前のプロジェクト

果たして、イエメンでの鮭釣りは実現できるのでしょうか? もともとスコットランド出身のユアンですが、スコットランド弁丸出しでまさに水を得た魚のようにフレッドを演じます。

実はフレッドの結婚生活は破綻寸前。長年連れ添ってきた妻とまったくうまくいっておらず、一方のハリエットは、やっとできた恋人を中東での戦争で失ってしまったと知るや、まったくプロジェクトどころではなくなってしまいます。

最初は目もくれなかった政府が、中東との関係修復に今回のは絶好のプロジェクトとやっとのことで重い腰を上げるようになってきたという矢先、私生活面でも頓挫寸前のプロジェクト。

そんな中、当然の流れといえば流れ、フレッドもハリエットも失意の中、たがいに心魅かれていくのですが、なにせ恋には不器用な二人。

果たして二人の恋のゆくえは? プロジェクトと共倒れになってしまうのでしょうか? コイのゆくえは、何と、一匹のサケが知っていたのです。

都会という砂漠で乾ききった心を、こんな映画で、そっと潤してはいかがでしょう? きっとあなたの心の片隅に不可能を可能にする人たちのガッツとロマンという「釣果」が訪れることでしょう。