Netflixの登場でテレビ・ドラマの時代はついに終わった?!

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Netflix が Netflix たらしめている要素

数あるNetflixの注目オリジナル作品の中で、何がいちばん楽しみかと言えば、それは個人的には『ハウス・オブ・カード 野望の階段』に尽きるでしょう。もちろん、この作品、ビデオ・レンタルでも他のネット配信でも観られることは観られますが、今一度見直してみたいアングルがあることにみなさんはお気づきでしょうか? では、一体それは何か?!

第四の壁を壊せ!

それはズバリ、第四の壁を壊しているからなのです。なんだ、その第四の壁とは?

演劇に詳しい人ならご存知かもしれませんが、第四の壁と言うからには、第一、第二、第三の壁があるはずで、まず演劇の舞台を想定していただければ、ははぁ・・・とすぐに分かってもらえるでしょう。

観客席から見て、舞台あるいはスクリーンに当たるのが第一の壁、出入口があるだろう左右の壁を第二、第三とすると、舞台上の世界と観客がいる現実世界との境界線に想定したのが第四の壁という考え方で、普通ならやってはいけない、舞台上の演者が観客に向かって語りかける手法を英語では、Breaking the fourth wall、つまり、「第四の壁を壊す」と言うのです。

あくどい本音こそ快感だ!

大統領を目指す下院議員の主人公フランクが、時折、観客=カメラに向かって語りかける、「人をだましてどこが悪い」「こんなバカは死んでしまえ」的なあくどい本音のつぶやきこそ、このBreaking the fourth wallなのです。

これほどの悪役が主人公で、人殺しや不倫や男色や3Pまでしてしまう悪の権化みたいな主人公が平気でまかり通ってしまうのは、放送コードがあるテレビならまずありえないでしょう。

テレビの場合はスポンサーの出資によって番組がまかなわれていますが、ケーブルはスポンサーのかわりに視聴者から料金をシステムでそのくびきから脱出し、自由度を獲得しました。しかし、そこにはケーブルというハード面での不自由さが残ります。

Netflixは、ネットというさらに自由な媒体をツールにしたことによって、さらなる自由を獲得しました。だからこそ、テレビでは決して見ることのできない、モラルというものがまったくないフランクのような存在を通じて人間の本性を心ゆくまで堪能できる快感が得られるのです。

オバマ大統領がこのシリーズの隠れファンであるというのも、なんだかうなづける気がしますね。民主党のオバマをひきずりおろすためなら、たとえ国益に反することでも平気でする共和党陣営に対するあてこすりが裏読みできるからでしょう。

シェークスピアも入ってるぞ

もともと、このシリーズは、サッチャー首相政権で首席補佐官を務めた人が書いた小説とそれから発展したイギリスでテレビ・ドラマが原作なだけに、当然シェークスピアの要素も入っています。

このBreaking the fourth wallは、もともとシェークスピアも『リチャード三世』あたりからすでにやっていた手法ですし、奥さんのクレアが夫をあおり、影で糸を引く感じは『マクベス』をも感じさせます。英語では、だんなをそそのかして悪事を働くかみさんのことをLady Macbethと言ったりもします。

Netflix のオリジナルドラマ作品群の根底に流れるもの

さてさて、こんな視点で『ハウス・オブ・カード 野望の階段』を演劇的に、いや本格ドラマとしてドラマティックに「再見」するのが、このシリーズのほんとうの楽しみ方なのではないでしょうか? 人間の本性だけでなく、従来のテレビでは見られない「何か」が続々と見られるNetflixの作品群はこれからも大注目でしょう。

従来のテレビが第一の壁、映画が第二の壁、ケーブルが第三の壁としたら、Netflixこそが、いずれ第四の壁を壊す存在となっていくことでしょう。

テレビ・ドラマの時代はついに終わるのです!

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