『イングリッシュ・ペイシェント』で映像の官能美を存分に味わおう!

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イングリッシュペイシェントは冒頭のタイトルバックがたとえようのない美しさをかもしだします。砂漠を扱った映画には、言うまでもなく、あの名作『アラビアのロレンス』がありますが、一歩もひけをとらない美しさにまずは圧倒されます。

こちらは今から21年前にアカデミー賞作品賞を獲ったアメリカとイギリスの合作映画ですが、まったく古びていません。

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茶色い岩壁を砂漠に変える映像的アイディア

しかも、美しいばかりではありません。猛烈な砂嵐いで車はあっというまに砂に埋もれてしまったり、画面には圧倒的な砂漠の猛威がパワフルに叩きつけられます。

たとえば、冒頭、カメラは見事な筆づかいで描かれるラスコーの洞窟のような茶色の壁画をまずクローズアップで映し出します。そして、その壁画を模写する達人のような筆づかい。その筆先が描く人型が、いつのまに、しなやかに、砂漠に影を落とす複葉機の影に変わったりします。

岩壁が砂漠に溶融するさまが、実に官能的なのです。思いもつかない場面と場面の転換に、意表を突かれます。

 

記憶喪失患者と看護師の物語

砂漠や複葉機の事情に入る前に、物語は、第二次大戦も終わりに近いイタリア戦線に軸足を置きます。フィレンツェの近くのとある寒村で、ハナというフランス系のカナダ人の看護師がドイツ軍の爆撃によって大きく破壊された焼け跡状態の修道院で、ある「英国人の患者(つまり、タイトルのイングリッシュ・ペイシェント)」の面倒を看ていました。

 

ハナは自分と親しくなった人が死んでしまったり、親しい女友達までが地雷で爆死したりして、次々と不幸な目にあうので、自分は呪われているのではないかという思いにとらわれていました。

しかも、このイギリス人の患者は顔に重度の火傷を負い、見るも無残な顔かたちになってしまった上に、戦争で記憶喪失になり、自分の名前も憶えていません。

ハナは彼の面倒をずっと看ていたのですが、先の思いから神にでもすがりたい気持ちで、この修道院跡に住みつき、独りで患者の面倒を看ようと一大決心をしたのです。

 

「英国人の患者」というのは、ただのレッテル

患者は記憶こそ失っていますが、ぼそぼそとしゃべる言葉からかなり教養の高い人物と思われ、唯一の持ち物であるヘロドトスの歴史書の中には、先の壁画の模写図と恋文らしきものがはさまれていました。

 

そして、ハナが看病を続けているうちに、患者は次第に断片的に記憶を取り戻し、名前はどうやらラズロ・デ・アルマジー伯爵という名前のハンガリーの貴族の出らしいということが分かってきます。しかし、しゃべる言葉はかなり流暢なイギリス英語ですから、顔がくずれているので特定しにくいだけに、「英国人の患者」というレッテルを貼られていたのです。

泳ぐ人とKとは?

謎めいた導入部でわくわくしますね。そして、記憶のヴェールが徐々にはがれていくにつれて、今から十数年前の1930年代の後半に、アルマジーはアフリカの砂漠地帯で探険めいたことをしていたが分かってきます。というのも、イギリスの王立地理協会は当時、サハラ砂漠に探検団を派遣していて、彼もその探検団の一員だったのです。

そのグループにはクリフトンというイギリス人の夫妻もいて、どうやらアルマジーはキャサリンというその美しい妻と不倫関係になっていたらしいということが分かってきます。アルマジーは推定で35才ぐらいの男盛り、キャサリンも同じくらいの年格好です。大人の恋です。歴史書にはさまれていた模写図は、探険の要所で見つけた実在の〝泳ぐ人の洞窟〟の壁画の模写で、恋文に書かれていたKというイニシャルはキャサリンの頭文字だということも分かってきます。

砂漠を舞台にした灼熱の大人の恋

冒頭の砂漠地帯を浮遊する複葉機のイメージは、当時の記憶の断片だったというわけです。つまり、この映画は時系列の語り口ではなく、記憶喪失者とその面倒を看る看護師に軸足を置いた、流線型的ではないノン・リニア型の語り口なわけです。

さて、そこからあぶり出される砂漠の灼熱のような大人の恋と、やがて始まるハナの不器用な恋を中心に描き、そこに次々と襲いかかる戦争によるサスペンスがさまざまな登場人物の人間模様を盛り上げ、見ごたえのある戦争ドラマとなっています。

 

砂漠と爆弾と拷問と…

砂漠ということ自体がすでにエキゾチックで、怖い物見たさ的な道具立てですが、どうかみなさんも、はらはらするような酷薄な男女の愛と、砂漠や爆弾処理や拷問など、命がけの恐怖の連続で鳥肌が立ちまくるシーンの数々を楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

 

イギリスのブッカー賞を受賞した同名小説の原作の、さすがの文学的香気も同時に楽しめます。砂漠探検のトランクを一度開けてみませんか? 最後に、密会中のこの二人の名ゼリフです。

アルマジー「君はどんな時がいちばん幸せなんだい?」

キャサリン「今よ」

アルマジー「じゃあ、どんな時がいちばん不幸せ?」

キャサリン「それも今よ」

大人の恋と・・・人生の砂漠が味わえます。

Netflix でイングリッシュ・ペイシェントを見る

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