『エンド・オブ・ウォッチ』のロス市警の〝リアル〟はホンマモンだ!

 

 チラシの宣伝コピーに「これが、ロス市警のリアル」とある通り、犯罪の現場に立ち合っているようなリアル、YouTubeのヤバい投稿画像のような臨場感が満載なのが、この『エンド・オブ・ウォッチ』という映画です。

 

危険な天使の街、ロサンゼルス

年間犯罪数10万件を越え、5分に1度、事件が起きると言われ、全米第2位の犯罪発生率街を〝誇る〟ロサンゼルス。

そのロサンゼルスの中でも、イングルウッドやコンプトンと並んで、飛び抜けて物騒なサウス・セントラル地区(現在はサウス・ロサンゼルス)は、黒人のストリートギャングの活動が盛んすぎて、警察も寄り付かないというほど、〝天使の街〟(ルビ:天使の街=ロサンゼルス)とは名ばかりで、最悪の治安状態と言われています。

さらに危険なニュートン地区

人口の87%がヒスパニック、10%がアフリカ系、白人はわずか1%しかなく、南北3~2キロ、東西1キロ、面積5.8キロというこの小さな区画をさらにしぼった、この映画の主な舞台となっているニュートン地区は、なんと50(!)ものストリート・ギャングがそこにひしめき合い、主にヒスパニック系とアフリカ系の抗争が絶えず起きている全米最悪の銃犯罪多発地域だと言われています。

日本の警察の24時間密着取材などお話にならないヤバさ

この最も危険な地区を舞台に、署内でも屈指の検挙率を誇る白人警官のテイラーとメキシコ系警官のサヴァラの二人が、日夜奮闘する姿を、まるで警察に24時間密着取材したテレビ番組のように、いや、その何十倍も生々しく描くのがこの『エンド・オブ・ウォッチ』という映画なのです。

しかし、ご存知のように、アメリカは銃社会。この二人の巡回現場には、日本のテレビ番組など、お話にならないくらい恐ろしい命がけの瞬間が待ち受けています。

THIS HANDOUT FILE HAS RESTRICTIONS!!! JAKE GYLLENHAAL, front, and MICHAEL PENA in “END OF WATCH” a film directed by David Ayer. NYTCREDIT: Open Road Films

拳銃の品番まで教えてくれるこの映画の〝リアル〟

たとえば、もう冒頭から、容疑者の逃走する車と主人公たちが追うパトカーとのカー・チェイス。容疑者の車に体当たりして、なんとか停めた後は、いきなり向こうから仕掛ける銃の乱射。

それでも、二人は銃で反撃してあっという間に犯人たちを仕留め、一件落着。テイラーが所持している拳銃はスミス&ウェッソンでもコルトでもなく、グロック19と、そこまで教えてくれるのがこの映画の嬉しい〝リアル〟です。

言葉づかいも超リアル

この映画は、主人公のテイラーがあるプロジェクトのために特別な許可を得てビデオや車載カメラで、銃をバンバン撃ち合う現場や汚い言葉を言い合う警官たちのえぐい日常までも収めるという体(てい)で、撮られているモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)形式で進められます。

なので、自分たちが乗るパトカーを警官たちが〝ショップ(shop)〟と呼んでいたり、上司が俺を怒らすなという意味で、俺の顔にウンコをひるな(shit on my face)といったような言葉づかいの〝リアル〟もびしびし伝えてくれます。

監督は元ギャング

それもそのはず、『トレーニング・デイ』の脚本で一躍有名になったデビッド・エアーというこの映画の監督は、もともとこの地区出身のアイルランド系の白人で、メキシコに近い土地柄もあって英語よりもスペイン語を話すようになり、あげくにギャングの一員となって明日をも知れぬ人生を歩み、このままでは刑務所に行くか、銃撃戦に巻き込まれて死ぬか、そのどちらかだろうと、海軍に入隊してはギャング人生から脱出したほどのツワモノだったのです。

だからこそ、この映画に出てくるギャングの抗争、それと戦う警官たちの命がけの〝リアル〟もハンパないのです。

玄人もうなるよく書けた脚本

監督のデヴィッド・エアーはこの脚本を6日間で書き上げ、主演のジェイク・ジレンホールは脚本を受け取った後、1時間で読み終えてすぐにエアーと連絡を取ったというほど、脚本(ルビ:脚本=ホン)もよく書けているからこその、作品のクオリティの高さなのです。

タイトルにメジャーの映画会社のロゴが入らないのを見ても分かる通り、この映画は、オープン・ロード・フィルムズというインディペンデント系の製作会社が作っていますが、インディペンデント系のアカデミー賞とも言えるインディペンデント・スピリット賞をサヴァラ役の助演のマイケル・ペーニャと撮影監督が受賞しているのを見ても、クオリティの高さが分かりますし、あの映画批評サイトのRotten Tomatoesも85%という高評価です。

まとめ

どうかこの映画の〝リアル〟をあなたも存分に味わってはいかがでしょう。あまりの〝リアル〟さに、女性も子供は寝かしつけてから観るほうがいい―それだけは確かです。

 なお、タイトルのEnd of Watch(EOW)とは、警察官が業務終了という意味で、一日の終わりに日誌にそう書く警察内の隠語で、もし万一のことがあって家に帰ることができなければ、もう一つの“殉職(EOW)”という意味もはらみかねない(傍点:はらみ)はなはだ物騒な言葉でもあるのです。さあ、End of WatchのStart of Watchの時間です!