いきなりコードネームといわれたって、スパイのコードネームなのかってことぐらいは察しがつきますが、そもそも、後ろに続くU.N.C.L.E.ってなんでしょう?
そういう人のために、ここではこの映画を存分に楽しむためにも、作品のバックグラウンドをちょっと解説しておきましょう。
実はリメイク作品だった
そもそも、この映画は、日本では1966年から1970年まで、日本テレビ系列で放送されたスパイもののテレビ・シリーズ『0011ナポレオン・ソロ』のリメイクで、タイトルの通り、ナポレオン・ソロという女ったらしのスパイが活躍するシリーズでした。
(写真:美女とナポレオン・ソロ)
0011というコード・ナンバーを見ても分かる通り、早い話が007ジェームズ・ボンドのテレビ版だったというわけです。その証拠に、このシリーズの初期の段階には、〝ジェームズ・ボンド〟シリーズの原作者であるイアン・フレミングも関わっていました。
顎がきゅっと尖ってて、にやけた感じのロバート・ヴォーンという人がソロを演じて、当初は、The man from U.N.C.L.E.っていう原題のド頭のthe manが示す通り、まさにソロっていうぐらいのスタンスだったんです。
しかし、東側のスパイのイリヤ・クリヤキンという敵対するキャラクターが出てきたら、クールな正反対のキャラだったせいか、脇役のクリヤキンのほうが女性を中心に人気が出てきてしまい、この二人が活躍するシリーズに変わっていったのです。
(写真:イリヤ・クリヤキン)
そして、この二人が所属する諜報組織の名前がU.N.C.L.Eというわけです。
え、なんか伯父さんっぽいって・・・?! 実は、それは正しいです。
というのも、アメリカ政府のこと、Uncle Samって言ったりするじゃないですか? それも匂わせているわけですね。
正式には、U.N.C.L.E.(アンクル)は United Network Command for Law and Enforcement の略で、「法執行を指揮する国際的な組織」っていうことですが、CIAだということはピンと来ますよね。でも、それより国際的な組織として設定されています。
これがわがナポレオン・ソロやイリヤ・クリヤキンが所属する善玉の組織なんです。
それに敵対する東側の組織の名前が THRUSH(スラッシュ)と言います。これも長い正式名の略なんですが、長くなるので省略します。ここでは、悪玉の組織と覚えておけば良いでしょう。
ソロにまつわる裏話
本国でパイロットなんか作っていた初期段階の64年頃、ジェームズ・ボンドの『007 ゴールドフィンガー』という作品が大ヒットして、これにミスター・ソロあるいはソロというキャラクターが出ていたんです。
そこで本作品におけるナポレオン・ソロに対して、「ソロ」とか「ミスター・ソロ」という呼び名が製作の初期の段階で問題になりました。つまり、ボンド側から待ったがかかったというわけです。
大ヒット作だったので、強気のボンド映画のプロデューサーたちが、ソロという名前を使うのは相成らんと言いだしたのです。
しかも、制作に原作者のフレミングが関わっているというのも相成らんと文句をつけ出したのです。
(写真:『007 ゴールドフィンガー』のソロ)
という中、フレミングがなんとか間に入り、ミスター・ソロはいかんが、ナポレオン・ソロならよかろうがということで、ちゃんちゃんと相成ったという一幕もあったそうです。
というぐらい、当時は東西冷戦の時代ということもあって、未曾有のスパイ・ブームだったので、みんなナーバスになっていたのでしょう。
日本での大ヒット
各話の作風は最初はシリアスでシビアなトーンだったのですが、だんだんコミカルなトーンに変わり、あげくのはてにソロが熊とダンスを踊るまでエスカレートしてくると、だんだんシリーズの人気にも陰りが出始めてきました。
あわててシリアス・トーンに逆戻りしても、時すでに遅し、シリーズは人気を取り戻すことはできなかったようです。
アメリカ本国では1967年に入ると、マンネリ化して、またこれは SF かという作風になったりして、徐々に人気が落ちてきました。
しかしながら、所変わって日本では、驚くなかれ「ビートルズか!? ナポレオン・ソロか!?」と言われるほどの大人気番組となっていました。特に女性ファンの間では、クールなイリヤ・クリヤキン役のデビッド・マッカラムの人気が絶大でした。
(写真:ビートルズと一緒のロバート・ヴォーン)
ちなみに、初期の脚本家として、あのロマン・ポランスキー監督、ジャック・ニコルソン主演の探偵映画の名作『チャイナ・タウン』の名脚本家ロバート・タウンもクレジットされていましたし、音楽はやはり『チャイナ・タウン』、そして『猿の惑星』のジェリー・ゴールドスミスでした。
50年以上を経て蘇った本作品
さて、そんなこんなから50年以上の時を経て、蘇ったのが、この『コードネーム U.N.C.L.E.(アンクル)』なんです。
時代設定は東西冷戦のさ中の1960年代前半、ナポレオン・ソロはCIAエージェント、イリヤ・クリヤキンはKGBのエージェントとして、核兵器拡散を画策する謎の国際犯罪組織を制圧するため、長年の政治的対立を乗り越えて手を組むというストーリー仕立てです。さて、どんな活躍をしてくれるのか?
こんな基礎的な知識を踏まえて、観てみるのも一興ではないでしょうか?
監督は『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』のガイ・リッチーというのも期待が持てますね。ちなみに、マドンナの元旦那です。
今回はナポレオン・ソロがプロフェッショナルの泥棒からCIAのエージェントに転向したという設定で、ということであれば、観る者のハートを存分に盗んでいただこうではありませんか!
(オフィシャル・トレーラー【英語】)
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