豪華すぎる俳優陣が名を連ねる演劇的な映画
演劇と映画の大きな違いは「舞台の自由度」にあると思います。映画の場合は、ロケ地を変えスタジオを変えることで、舞台は無限に広がります。その一方で、演劇は決まったステージ上で全ての物語が進みます。カメラアングルもなく、決まった角度と決まった舞台で表現するのです。
演劇の要素を取り入れて、スクリーンの中を小劇場に見立てる作品は日本映画によく見られます。海外でいうところのフルハウスを映画館で放映するようなもの、といえばわかりやすでしょうか。この分野を最も得意とする一人が三谷幸喜監督です。スクリーンを箱庭のように思いのまま操り、彼の世界観へ視聴者を引き込みます。「ラヂオの時間」は、その原点とも言える三谷作品です。
それにしても俳優陣が豪華です。今同じキャストで召集かけたら出演料いくらになるんでしょうか・・・想像できません。どれくらい豪華かというと「唐沢寿明」「西村雅彦」「鈴木京香」「戸田恵子」「細川俊之」「井上順」「小野武彦」「モロ師岡」「布施明」「梶原善」「田口浩正」「近藤芳正」「藤村俊二」が一堂に会するのに加え、「市川染五郎」「佐藤B作」「桃井かおり」「渡辺謙」が特別出演します。もう文句無しに、まさに夢のキャスティングですね。
間違いなく名作という「壁」
ラヂオの時間は三谷監督の才能が遺憾なく発揮された映画です。素人が脚本したメロドラマが、様々な事情から壮大なストーリーとなり、まとまりがないままラジオドラマの生放送が始まります。テンポよく進むドタバタ劇、作品にかける思いをぶつけるスタッフ・キャストたち、物作りの現場が面白おかしく描かれています。劇中で西村雅彦演じるラジオディレクターがこんなことを言っていました。
「ラジオには無限の可能性がある。聞く人の想像力で宇宙だって表現できる」
このセリフを聞いた時に、三谷監督スゲー!と感動してしまいました。ラジオというこじんまりとした舞台をスクリーンに詰め込んで、さらに舞台演劇のように展開させ映画として成立させられるのは、この人だけでしょう。
一方で、三谷監督が手掛ける映画で、この手法以外の作品は結構・・・うん、はっきり明言できませんが可もなく不可もなくといった内容が多い気がします。人には得手不得手がありますからね。かと言って三谷監督は演劇的な映画を脱しない限り、ラヂオの時間を超える作品を一生撮れないと思います。完成度が高く、三谷ワールドの代名詞となっているが故の壁といえるでしょう。
これからの三谷監督
ここ数年の三谷監督映画は、かなり挑戦的な作品が多いような気がします。ステキな金縛り、清洲会議、ギャラクシー街道と様々なジャンルを手がけ巨匠としての地位に近づいているのではないでしょうか。色物監督、とんでも脚本が三谷色としてスタンダードとなった今、その日は遠くないと思います。また10年後くらいにラヂオの時間のような箱庭映画をもう一度撮ってほしいものですね。きっと円熟味が増して、最高の映画になる予感がします。
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