公開されるや否や、こんな記事を書くとNetflixに消されるんじゃないだろうか戦々恐々ですが、言わせていただきます。
「スペクトル」が惜しい!惜しすぎる!
Netflixよ、本気だな
2016年12月現在、Netflixのトップページを飾っている「スペクトル」は劇場映画並みのCGグラフィックと近未来の世界を丁寧に描写したアクション大作です。
突如出現した謎の光学的物体と人類の戦いを描く、それはそれは重厚なSF。壊滅し荒廃したヨーロッパ、無茶苦茶カッコいいデルタフォース隊員たち、最新鋭のVFXなどNetflixの本気が伺えます。
それでも、物足りさをかんじてしまうのはなぜでしょうか。私がSFなんて御伽噺に唆られない乾いた大人になってしまったから?それとも今年のクリスマスに予定が入っていなかったから?
いいえ、そうではないんです。理由はバッチリ分かっています。解説していきましょう。
「スペクトル」が惜しい理由①ギミックが物足りない
映画において、ギミックの使い方はとても重要です。例えばマトリックス。マトリックスのギミックといえば「スローモーションを駆使したスタイリッシュアクション」「銃弾の弾道を描き、効果的に見せて迫力アップ」「武道に通ずる格闘術」などが挙げられます。
で、これらって別に目新しいものではないんですよね。実はマトリックス以前にも使われていた手法なんです。
評価を得たのは、それを当時の最新技術で全面に押し出した点であり、世界観を一層引き立てたからに他ありません。様々なギミックを掛け合わせて、効果的に見せているんですね。
アクション以外にもギミックは存在します。また例を挙げるならホラー映画の傑作「シャイニング」のラスト。迷路の中を逃げ惑うダニーと追いかけるジャック。この迷路という舞台が「恐怖」「混乱」「混沌」などのイメージに直接結びつき、一層観客を引き込むのはわかりきっていることですが、光と影の使い方がとても印象的。迷路というギミックを最大限に活かしています。
さて「スペクトル」のギミックというと、タイトルにもなっている未確認物体「スペクトル」の存在が挙げられます。
奴らは肉眼では見えず、弾丸もすり抜けてしまい、触れただけで人を殺してしまう存在。弱点はあるものの、それを見つけるまで人類は防戦一方です。
こんなに恐ろしい敵なんですが、観ていても恐怖を感じません。なぜなら彼らの行動が全て予想の範疇にあるからです。悪い意味で期待を裏切ってくれません。
まず透明ということは不意打ちによる攻撃は想像できます。なのに、この作品ときたら「くるぞ、くるぞ、くるぞ、やっぱり来たー!」ばかりで驚きに欠けます。
で、触れただけで殺してしまうという理不尽さはあるものの、触れられた方は力なく倒れるだけでアッサリしているもんです。観ている方は「あ、死んだんだ」としか思いません。もっと恐怖の存在なら、見るも無残な死に様を見せてくれって話。
せっかく「スペクトル」というギミックがあるのに、非常に惜しい。
「スペクトル」が惜しい理由②因果関係がない
なぜ主人公たちは「スペクトル」と戦うのでしょうか。理由はただ一つ。「スペクトル」が人類の脅威で、たまたま残存しているのが自分達だったから。
はい、ダメです。これじゃ街で肩がぶつかった不良同士の喧嘩です。
ターミネーターを思い出してください。なぜサラ・コナーは命を狙われたのでしょうか。未来でターミネーターに反旗を翻す人類のリーダー、ジョン・コナーの母親だからですよね。
なぜジョン・ウィックはマフィアを潰したのでしょうか。飼ってた犬を殺されたからですよね。
そう、映画において因果関係は面白さを支える重要なシークエンス。名作と呼ばれる作品は、間違いなく因果関係を掘り下げてストーリーに当てています。
ラノベでよくある「高校生が異世界へ飛ばされちゃった」「なぜか巨大な陰謀に巻き込まれて世界を救う羽目になっちゃった」という巻き込まれ型の作品にも同じことが言えますが、なぜ因果関係を作らないのか。
反対に言えば、そのバックストーリーを練っておくだけで深みが増すんです。
「スペクトル」は俺たちがやらなきゃ誰がやる!的な精神で戦いに挑みますが、その部分をもっと掘り下げて欲しかった!
悔やまれるけど、決して駄作ではない!
勘違いしないでいただきたいのですが、決して「スペクトル」がどうしようもない駄作なわけではありません。
最初に述べたように、光る部分はたくさんあります。
しかし映画の骨組みとなる部分が作り込まれていないせいで、いまひとつ没入感に欠けてしまうんです。
次回作は期待してますよ、Netflixさん!
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