アポカリプスとはなんぞや?
アポカリプス、という言葉を和訳するとどんな風に表現されるかご存知でしょうか。
答えは「黙示」です。
では黙示とは何でしょうか。これはキリスト教における教義で、終末における悪の時代の終焉や死者の復活など様々な意味を持ちます。
フィクション作品においてアポカリプスというと、いわゆる人類文明の崩壊を指すことが多いです。
アポカリプス(終末)もしくはポストアポカリプス(終末後)と呼ばれる作品群の代表には「マッドマックス」「北斗の拳」「ウォーキングデッド」など、人気作が多数公開されています。
映画「トゥモロー・ワールド」は世界中の人間が不妊に陥り、終末へ向かう様が描かれているSFサスペンスです。
絶望的で救いのない世界が描かれている作品は多くの人々を惹きつけますが、それには理由があります。
アポカリプス系フィクションは希望の物語?
人気のあるアポカリプス作品の中でも特に支持を受けているものは「ハッピーエンド」であることが殆どです。
もちろん中には救いもない、どうしようもないエンディングの作品も存在します。しかし往々にして一部のカルト人気だけで、そういった作品は大衆には好まれません。
「トゥモロー・ワールド」も例外なくハッピーエンドを迎えます。ネタバレなので肝心要の部分は伏せますが、どんな犠牲を払ってでも目的を果たした時点でハッピーエンドだと個人的には思っています。
さて人間というのはハッピーエンドが大好きです。大好物です。映画好きの中にはバッドエンドや鬱エンドを好む方もいらっしゃいますが、ごく少数でしょう。
おそらくハッピーエンドが嫌い、という方はいません。そんな奴とは友達になりたくないですね。
で、このハッピーエンドが好まれる理由として一番に考えられるのは単体で作品が完結するからではないでしょうか。
具体的に説明すると、それぞれのエンドは全く違う以下の性質を持ちます。
ハッピーエンドは映画の中だけで全てが帰結します。例えばディズニー映画を思い浮かべてください。世界が平和になり、想い人とは結ばれ、目的が成就しますよね。映画の中で起こった出来事に対して望んだ結果が伴い、めでたくハッピーエンドを迎えます。
余談ですがディズニーがハッピーエンドばかりなのは、夢を見てもらいたいとか子供達のためとかは方便で、単にそっちの方が売れるからだと勘ぐっています。
一方でバッドエンドの映画は、観た後に色々な含みを持たせようとしますよね。
例えば「12モンキーズ」です。
最終的には負のループが発覚する、という最悪な形でエンディングを迎えます。
すると、どうでしょう。多分観た人はこんな風に考えます。
「あの時主人公の選択が違えば結末が変わっただろう」「人の生き方や行動はすでに決まっていることで、運命からは逃れられないのか」「荒廃した世界を防ぐには、どうするのが正しかっただろう」
このように、バッドエンドに対して色々な思いを抱くはずです。
そして考察は全てハッピーエンドを迎えるにはどうすればいいか、というところに行き着くでしょう。
これは全て「ハッピーエンドになるためのプロセス」を自分の中で再構築している行為に他なりません。
そう、人間誰しも不幸なまま終わりたくないんです。だからアポカリプスもので希望のない作品よりも、ハッピーエンドの方が好まれる傾向にあります。
そしてアポカリプスものは、もしかしたら自分が近い将来実際に体験してしまうかもしれない、という妙な親近感も手伝ってハッピーエンドであってほしいと強く願うはずです。
もしアルマゲドンで最後ブルース・ウィリスがスイッチを起動させなかったら、観客全員が腹を立てていたことでしょう。
異色のアポカリプス「トゥモロー・ワールド」
自分が体験するかもしれないアポカリプスものはハッピーエンドを期待してしまう傾向にあり、それこそが人気の秘密です。
「核戦争で世界が荒廃、文明の衰退」「謎のウイルス蔓延により人類絶滅の危機」など、現実味のある題材が好まれますね。
トゥモロー・ワールドは「不妊」という妙なリアリティが観ている人々を没入させます。
ありえそうですよね。滅亡へのタイムリミットが目に見えてわかる、という絶望感。
ただ映像的には過激さがなく、ある意味アポカリプスものの中では異色です。
その分、この映画は現代人が抱える問題や見どころたっぷりのロングカットなど注目すべき点は他にもたくさんあります。
今回はレビュー、というよりトゥモロー・ワールドの名を借りてアポカリプスの魅力を説明しただけですね。
トゥモロー・ワールドはNetflixで好評配信中です。
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