GONINの男たち
自分の中の狂気が目覚める。
そんな言葉が当てはまる人生体験を一度くらいは経験したことがあるのではないでしょうか?
私はあります。
学生時代にショッピングセンターで恐喝され、お財布を怖いお兄さん達に奪われた時に私の中で何かが弾けました。
気付くと、豹変した私に怯えてか逃げ回るお兄さん達を追い掛け回し、一体どっちが悪者かわかりません。何事かと思った大人たちが駆け寄ってきて、てんやわんやの大騒ぎ。
私は興奮していたため、相当すごい形相をしていたのか「落ち着いて、落ち着いて」と宥められ気が静まった瞬間、堰を切ったようにその場で大泣きしました。
普段私はあまり怒ったりすることがなく、あそこまで感情を露わにしたのは初めてでした。
人間に潜む狂気って、恐ろしいですね。日本の映画でも、そんな狂気が感じられる作品がいくつもあります。
Netflixで配信されている「GONIN」も、まさに狂った映画と言えるでしょう。映画のタイトルである「GONIN」は、主人公の五人の男たちを指します。
「GONIN」のみどころ
借金まみれのディスコのオーナー、万代樹木彦(佐藤浩市)。ホモのフリをしているホモ、三屋純一(本木雅弘)。ヤクザな元警官、氷頭要(根津甚八)。精神が不安定なサラリーマン、荻原昌平(竹中直人)。パンチドランカーのチンピラ、ジミー(椎名桔平)。
設定からして無茶苦茶な危ない匂いのする五人ですが、彼らが手を組んでヤクザの事務所を襲い現金を奪うという大筋も無茶苦茶です。
不思議な縁で集まった男たちの狂った幻想と、悲惨な末路。救いのない物語の狂気を覗いていきましょう。
これぞGONINの狂気ポイント!
以下ネタバレを含みますので、ご注意ください。
狂気1. イっちゃってる竹中直人
俳優の竹中直人さんは誰もが知る個性派俳優ですが、この映画ではひときわ異彩を放っています。普段はおどおどしているのですが、急に激昂して暴力的になり、かと思えば家族への愛情を垣間見せる男、荻原昌平。
見ているこっちがヒヤヒヤしてしまう危ない奴ですが、彼の秘密はもっと危ないものでした。
ヤクザの金を奪い、解散した五人。荻原も愛する家族の元へ帰るも、何やら自宅の様子がおかしい。
やだ、死んでる(家政婦口調)
実は荻原、妻と娘を手にかけている殺人鬼。自宅で死体のまま放置された家族は腐乱が始まっており、虫が湧く始末。異常者の彼は、すでに存在しない家族に電話をしていたんですね。理解不能です。
狂気2. 登場人物がホモばかり
同性愛を否定する気はありませんが、劇中にホモが二組も登場する映画は中々ないと思います。
まず一組目のカップルは万代と三屋。なんと五人の中でも主要人物の二人がデキちゃっています。演じているのは佐藤浩一と本木雅弘というビッグな組み合わせです。
三屋は冒頭に「ホモじゃねえよ!」と宣言しているにも関わらず、万代との別れのキスに抵抗する様子もなく。邦画史上に残る(ある意味)豪華なキスシーンですね。
二組目のカップルは殺し屋の師匠とその弟子。しかも片割れはビートたけしです!
彼らは筋金入りですよ。何ってったって自宅に帰った荻原を殺した後、死体が転がりまくる荻原邸で急におっぱじめますからね。しかもプレイ内容が若干SMチックという、またもや理解に苦しむ展開です。
全く必要のない設定ですし、単に狂ってるとしか思えません。初めて観た時は「何じゃ、この映画」と度肝を抜かされました。
その3. 女子供にも容赦ない
GONINの主人公たちは、ヤクザの金を盗んだ訳ですからタダでは済みません。地の果てまで追ってが来て殺しにかかってきます。
その被害は身内や恋人にもおよび、すべからく死にます。
ジミーの恋人であるタイ人のナミィー。可愛らしいですね。ジミーは彼女のことを大切にしており、危険を承知の上事務所を襲撃したのはナミィーと幸せに暮らすためでした。
はい、死にます。ナミィー死にます。ヤクザに捕まり、強姦された挙句殺されてしまいます。悪い事何一つしてないんですけどね、彼女。問答無用です。南無。
氷頭は離婚していますが、事務所の襲撃で大金が入り復縁を望みます。奥さんも満更ではない様子。娘さんも可愛いですね。なんと栗山千明ですよ!
でも死にます。残念です。最悪です。車に逃げ込んで、そのまま射殺されるというドラマ性ゼロの死に方。この物語に果たして救いはあるのでしょうか。
これぞ真の狂気
メッセージ性?そんなもの犬に喰わせろ。
そんな声が聞こえてきそうな映画「GONIN」を見ると、自分の狂気体験なんておままごとレベルでしょう。「事実は小説よりも奇なり」という言葉が嘘に思えてくるほど、この映画は振り切れています。
Netflixで公表配信中の「GONIN」を観て、極上の狂気を体験してみてください。
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