ロバート・デ・ニーロの熱演光る名作!だけど…
役者としての力量は計ることはできません。それでも役作りの徹底ぶりと幅広さでデニーロを超える俳優はいないのではないでしょうか。
時にマフィア。時にタクシードライバー。時にパーキンソン病患者。
まるで実在する人が乗り移ったかのような怪演です。
映画「マイ・インターン」でデニーロが演じたのはまだまだ働く気概のある老齢の紳士ベン。妻とは死別し、いまだに第一線で活躍したいとやる気に満ち溢れています。
ファッション通販サイトのシニア・インターン制度に応募したベンは見事採用され、アン・ハサウェイ演じるジュールズという女社長の元で働き出します。
ネットのことなどサッパリなベンは入社しても仕事がなく、社内で浮いた存在です。しかしアナログながらも経験と知恵を活かし周囲の信頼を得るようになり、ついには会社の精神的支柱となります。
ベンの助言や励ましによって社員が、そして会社が上向き最後はベン自身も新たな恋の予感を匂わせながらハッピーエンド。
とてもハートフルで恋人同士で見るにはうってつけの映画です。
でも、ちょっと待ってください。
世の中そんなに上手くいきますかね?
もしも自分の職場に年配の後輩が現れたら
想像してみてください。あなたが今勤めている会社の同じ部署にシルバー人材として新入社員が入社してきたら、どうしますか。
めちゃくちゃ気を遣いますよね。さらにその新入社員は大層なキャリアを持っているとしたら、正直扱いづらいなぁ〜と思ってしまうはずです。
その新入社員も以前はどこかの会社で重役をしていたのなら、仕事に対するプライドは相当でしょう。
やれ仕事の効率が悪いだとか、やれ身なりや礼儀がなっていないだとか若者たちに文句タラタラのはずです。
以前、とあるセミナーに参加してグループディスカッションをした時、同じグループに建設会社の社長さんがいらっしゃいました。セミナーの内容は人材育成がテーマで、一つのプロジェクトを仮定して擬似ミーティングを行うことに。
当時の私は店長職だったので、社会的な立場も年齢も建設会社の社長さんより下になります。話し合いはどうなったかというと私のような二十代の声はミーティング内で封殺され、社長のワンマンショーの始まりです。
自己紹介の時に「会社の離職率をどうにかしないとヤバイ」と社長は言っていたのですが、そりゃそうだろと思ってしまいました。同じセミナーを受講する立場でありながら、立場を決めつけて場をコントロールしようとするなんて…。
「マイ・インターン」のベンは物腰柔らかく、老若男女構わず好かれる好々爺です。みんなベンのことが大好きになります。
しかし、そんな人が世間に何割いるでしょうか。私だって高校生くらいの子供にアレコレ言われたら体面上はいい顔をしても、心の底では「クソガキ」を連呼するに違いありません。そして自分が年を重ねてもベンのような老紳士になれる自信は毛ほどもなく、若者から老害呼ばわりされる画が浮かびます。
一見社会派ドラマっぽく見れる「マイ・インターン」ですが、現実では(ほとんど)ありえないと言っていいでしょう。
そこを許すことができれば、大いに楽しむことができる映画には違いないんですがね。
それでも「マイ・インターン」をお勧めする理由
なぜ若い人は年配者の考えを「古臭い」「時代が違う」と一蹴してしまうのでしょうか。
なぜ年配者は若い人の考えを「自分には合わない」「理解できない」と拒んでしまうのでしょうか。
端からお互いが歩み寄ることを止め、そもそも見向きもしません。
先人の知恵や経験には敬意を払うべきであり、先人は自分にもそんな時代があったと寛容になるべきではないでしょうか。
「マイ・インターン」は高齢化社会に立ち向かう今の日本の環境に、理想的な未来図を提示してくれているような気がしてなりません。
年金や介護保険料も死活問題ですが、人対人の向き合い方も大切だと思います。私も年配者に向けて、思い直さなければならない部分がありますね。
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