言いにくいぞ、リディキュラス6!
ジョン・ウェイン、ゲイリー・クーパー、クリント・イーストウッドなど伝説級の俳優を輩出してきたウエスタンムービーですが、近年ではタランティーノ監督作品「ジャンゴ 繋がれざる者」が目立つくらいで衰退の一途をたどっていますよね。
そう、今ウエスタンムービーに元気がないのです。古臭い、パターンが一緒で飽きた。理由はいろいろ考えられますが、需要があまりないのは確かでしょう。
そんな食傷気味の西部劇に喝を入れるべく作られた(かどうか知りませんが)のがNetflixとアダム・サンドラーの強力タッグ映画「リディキュラス6(原題:The Ridiculous 6 )」です。
リディキュラスという馴染みのない単語。つい噛んでしまい「リディキラス」「リデュキラス」と言ってしまいます。画面の前で試してみてください。
あなたが憎む単語リデュキュラスは日本語で「馬鹿馬鹿しい」という意味ですが、アダム・サンドラーが手がける馬鹿げた映画となると視聴前から頬が緩みます。演技力のみならず、コメディやプロデュースの才能に溢れるサンドラーならやってくれる。そう信じて動画の再生ボタンを押しました。ラジー賞のことは一旦忘れましょう。
期待を裏切らない馬鹿げたコメディ
アダム・サンドラーフリークの皆さん、喜ばしいお知らせがあります。この映画面白いです。視聴前に「サンドラー最高!」と発声練習をしていたのが無駄になりませんでした。
物語は主人公トミーの父親である高名な悪党フランク・ストックバーンが拐われるところから始まります。5万ドルを隠し持っているフランクは、その在り処である歌う風車を案内するようシセラ(なんとダニー・トレホ!)一味に連れ出されるのですが、大金は別の場所に埋めてあるとトミーは事前に聞かされていました。
嘘だとバレたら父が危ない。トミーは父を救出するため5万ドルを集める旅に出ます。始まりは一人旅でしたが、行く先々でフランクのだらしない下半身が残していった異母兄弟が見つかります。その数なんと6人。運命的に出会った兄弟たちは力を合わせ、親父救出のため命がけで西部の荒野を駆け回ることに…。
ここまではよくある西部劇のお話。しかしこのリデュキュラス6は既存のウエスタンムービーを踏襲しつつ、内容のほとんどはコメディに終始しています。そもそも6人の兄弟がふざけた奴ばかりなのです。簡単に紹介していきましょう。
主人公のトミー(画像右から3番目)
幼い頃に母が何者かに殺され、インディアンに育てられる。インディアン仕込みの怪しい技で、日用品から爆発物を作るなど奇行が目立つ。
ラモン(画像左端)
フランクとメキシコ人の間に生まれる。飼っているロバがジェット噴射状の脱糞をする。ロバの方が活躍するのはご愛嬌。
リルピータ(画像左から3番目)
性への好奇心が尋常じゃないピュアボーイ。ママへの手紙は欠かさない。乳首が三つある。
ハーム(画像左から2番目)
パワー系の野生児。基本的に言葉は喋れないが、実はかなりの切れ者。特技は首絞め。
ダニー(画像右から2番目)
兄弟唯一の黒人だが、他人にはバレていないと思っている。自慢のイチモツでピアノが弾ける。
チコ(画像右端)
酒に溺れるナイスガイ。6分間息を止められる地味だけどすごい特技持ち。誰にも言えない過去の秘密がある。
そんな個性あふれる兄弟たちのやり取りがとにかく笑えます。特にリルピータのバカっぷりは群を抜いており、その言動に耳が離せません。とりあえず彼には食べ物で性欲を満たすな、と言ってやりたい。
また脇を固めるキャラクターも際立っています。トミーを逆恨みするレフトアイギャングの間抜けな一団や、施術方法がほぼ軟膏を塗布するだけの医者(さすがスティーブ・ブシェミ)など枚挙に暇がありません。
その中でも一番強烈だったのは、トミーが育った集落の仲間であるセクシーな女性。ちょっと色っぽいだけで何か特別なことをしているわけではないのですが、その名前は一度聞いたら忘れられません。ズバリ「股座の匂い」です。ひでぇ名前。
とにかく5万ドルを用意せよ!
兄弟たちは一にも二にも金が必要。一刻も早く父親の救出に必要な5万ドルを集めなければなりません。そこで採用された集金方法はなんと強盗です。大義名分の前では犯罪も許されるのか、と心配になりますが一応盗む相手は悪党に絞っています。だからと言って列車強盗直後のギャングを襲うのは間違っている気がしないでもないです。
強盗を働くのは何も列車だけではありません。銀行強盗にも手を染めます。基本中の基本でしょう。その他わざと騒ぎを起こして街全体の気を引き、隙を狙って盗みに入る火事場泥棒もしました。ここまでくるとそこらの悪党よりタチが悪いです。
トミーは高潔な精神の持ち主ですが、知らないうちにバカな兄弟たちに感化されてしまったのでしょうか。もしかしたらストックバーンの血がそうさせるのかもしれませんが、多分一番の理由は手段を選んでいる時間が無いからでしょう。正義感を振りかざすだけではないのがリディキュラス6の面白いところ。
また道中ではベースボール発祥に立ち会うなど、一筋縄ではいかない展開が続きます。全くストーリーと関係無いのに、唐突に始まるので思わず笑ってしまいました。ちなみに嘘は書いていないので悪しからず。
リディキュラス6の見どころとは?
内容はコメディを基調としていながらも、危機一髪の冒険やヒロインとのロマンスなど西部劇として抑えるとこは抑えています。ストーリーの本筋である父親を助ける旅は波乱とスリルに満ちていて、気づけば画面に釘付けになっていました。
その魅力を大きく占めるのは、やはり愛すべきストックバーン兄弟たちにあります。続々と仲間が増えて行く様はさながら西遊記のようで、次はどんな展開が待ち受けているだろうと、ワクワクしてしまいます。なんだかんだ古典的な要素は面白いものです。
また各所に伏線が散りばめられており、馬鹿げていながらも決して破綻させず丁寧に回収していくさまはアダム・サンドラーの本領発揮といったところでしょうか。図らずもホロリと来てしまう場面もあり、まるで玩具箱のような映画です。劇場公開していないのがもったいないとすら思えます。
アダム・サンドラーとNetflixの契約はまだ3本残っているようですが、一発目にリディキュラス6を持ってきたのは失敗だったかもしれません。後に続く作品のハードルが高くなってしまいました。
家族や恋人と見るには少し上品さが足りませんが、仕事終わりに腑抜けた姿勢で観るにはかなりオススメの作品です。歌う風車とは?トミーの母の死の真相とは?フランク・ストックバーンの真意とは?最後までたっぷり楽しんでください。
最後に一言だけ。
感動を返せバカ親父!
気になった方はまず予告をチェック!
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=ERTzNng787g]
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