『ハミングバード』は、B級アクションの大傑作だ!!

おなじみアクション俳優ジェイソン・ステイサムのアクション映画のこの作品ですが、どうもこの人がやる映画はB級映画っていう評価になってしまいますね。

ですが、B級アクションとしては、この『ハミングバード』大傑作の映画なんです。

もしまだ観てない人がいたら、ぜひおススメしたい一作ですね。

では、本作品の内容について、さっそく見ていきましょう。

 

なんでハミングバードなんだろう?

アフガニスタンの戦場で5人の仲間を殺された主人公のジョセフ・スミス(ジェイソン・ステイサム)は、憤懣やるかたなく、報復として5人の民間人を殺してしまうんです。

当然、これは軍規違反なので、軍法会議ものなんですが、その現場をしっかりと見ていたのが、無人偵察機の「ハミングバード」というわけです。

このハミングバードというのは、ハチドリという鳥なんですが、羽ばたきながらその場所にとどまっていることができるので、無人探索機もそのような性能を持っていたのかもしれませんね。

なぜ軍人からホームレスへ転落したのか?!

ただでさえ、軍法会議もののジョセフは、さらに軍の殺害容疑からも逃れ、ロンドンのホームレスに身をやつし、逃亡生活を始めます。Mr.Nobodyとしての生活を始めて、〝誰でもない人〟になります。

ただ、彼の惨めな境遇を慰めてくれるのは、ホームレスの少女ただ一人でした。ここまではよくある展開かもしれません。そういう身になってみないと分からないことですが。

別人願望

やがて、ギャングたちによって有り金や隠し持っていたドラッグを巻き上げる〝ホームレス狩り〟があった時、ドラッグと酒に溺れていたジョセフは、半殺しにされてしまい、その時、たまたま逃げ込んだ高級アパート(イギリスですから、フラットですね)に身を隠したのですが、その住人は半年以上もニューヨークに行っていて不在だったのです。

これは千載一遇のチャンスと、ジョセフは〝住人〟になりすまし、虚構の生活をそこで始めてしまうのです。都会人なら誰しも別人になりたい願望を持っているはずです。

ぞくぞくする背徳の愉悦

住人の高級服に身をつつみ、ホームレスから一気にセレブな生活を送るようになったジョセフは、裏稼業を始めます。もともと軍人上がりですし、ホームレスでもあるから、社会の裏の裏まで知り尽くし、腕っぷしにも覚えがあるわけです。別人生活は、見ていて、はらはらしますが、変にわくわくもしてしまいます。背徳の愉悦ってありますよね、誰しも。

一方、ホームレス狩りのどさくさで逃げたはずのホームレスの少女は、ギャング一味に捕まって、売春婦にされていました。ひどく心は痛みますが、しかし、生きていくためには、ジョセフは心を鬼にして、どんなダーティー・ワークもこなしていかねばなりません。

心優しき反逆者

そんなある日のこと、ひどいケガをしたジョセフを助けてくれたのは、見ず知らずの清楚な修道女でした。その修道女も、10才の頃、自分を18回もレイプした体操の教師を殺した過去を持ち、それがために、修道女に身をやつしていたのです。ジョセフ同様、脛に傷を持つ身だったのですね。魅かれ合わないわけがありません。当然、彼は淡い恋心を抱いていきます。

センチメンタルじゃないアクションはアクションじゃない?!

二人はたがいの傷をなめ合い、励まし合うのです。

一方、裏稼業と同時にホームレスの少女の行方も追っていたジョセフのもとに悲報が入ってきます。怒り狂ったジョセフは、またまた昔の古傷のように報復を始め・・・という、そんなお話しです。

タフさの中ににじませる情愛。センチメンタル全開。B級アクションはそうでないといけません。罪を犯した人間と修道女という存在。罪と贖罪の対比構図。

イギリス映画なので、アメリカでの公開時はズバリ、Redemption(贖罪)というタイトルでしたが、これはいただけませんね。硬すぎます。A級を目指してはいけません。

夜更かしする人の向こう側にアクション映画が見える

売春婦になった少女にハンパなく入れ込むいい年こいたおじさま。この構図は『レオン』やデンゼル・ワシントンのヒットしなかった大傑作『イコライザー』とも通ずるところがありますね。

後者では、元CIAのおじさま特殊工作員(普段はホームセンターの店員)がたまたま眠れない夜に、いつも行くダイナー(日本で言えばファミレスかな)で出会った娼婦に入れ込んでいくところがよく似てますし、その女からズブズブに甘い汁を吸うロシアン・マフィアにハンパなく報復していくところも酷似しています。

『イコライザー』では、エドワード・ホッパーの〝Nighthawks〟(そのものズバリ、夜更かしする人の意)という名画がヒントになったのがありありで、これが隠喩になっていますが、『ハミングバード』はハチドリのイメージが最後にカタルシスを運んできてくれます。

いずれは『イコライザー』もNetflix で配信されることを願うばかりですが、それまではそれに勝るとも劣らない傑作の『ハミングバード』を文字通り偵察してみるのはいかがでしょうか。