漫画やアニメの実写化、というのが昨今の邦画界で大きな市場となっています。中には嫌悪感を示す人もいますが、それは作品に対しての思い入れが深かったりするからでしょう。また日本人の描く二次元キャラクターは欧米人よりの顔つきをしているので、日本人が演じることに違和感を感じたりするんでしょうか。
実写映画化での成功例といえば、クローズZEROが思い浮かびます。大人気少年コミック「クローズ」のアナザーストーリーを描き、ファンが見ても納得のいく内容でした。
監督を務めたのは三池崇史。いま、日本で一番売れっ子の映画監督です。1年に二本以上の作品が公開され、2002年にはメガホンを取った7本の映画が公開されました。バケ○ノか。
引っ張りだこの彼ですが、全てがヒット作に恵まれているわけではありません。むしろ駄作の方が多いくらいです。
それでも三池監督のクレジットがエンディングロールから無くならないのは何故でしょうか。今日は少し紐解いてみましょう。
三池監督作品の特徴
彼の作品の多くはバイオレンス描写と、コメディ要素を含んだドラマが盛り込まれています。もちろん原作のある作品がシリアス、お涙頂戴であればそれに準拠するので原作クラッシャーというわけではありません。
近年では漫画・アニメの実写化が目につきますがホラーや時代劇なんかも手がける「オールジャンル」な監督としても知られています。
面白いのが、売れっ子監督なのに得意描写がバイオレンスという点ですね。一般層にウケないであろう暴力的な表現でブイブイ言わしているのに、何故かオファーが絶えません。
そこには三池監督の映画に対するスタンスが深く関わっています。
「仕事は来たもん順で受ける」
「映像化可能であれば、まず何でもやってみる」
これは三池監督自身が公言していることで、有言実行されていることが山のような作品群から伺えます。
私見ですが「何でもやってみる」というのは、常にチャレンジし続けるという意味合いも含まれているのではないでしょうか。
映画「クローズZERO」において、主人公のライバルである芹沢が人間をボウリングのピンに見立てて、ストライクをとる場面があります。かなり漫画調な表現ですが、芹沢という人物の規格外なパワフルさがダイレクトに伝わってきました。
映像化しづらい表現も、あの手この手で趣向を凝らす。その創意工夫は、三池監督のチャレンジ精神が具現化したものなのでしょう。
駄作が多いのは〇〇が悪い!
別に伏せ字にするようなことでもないのですが、三池監督の作品に駄作が多いのはあることに起因しています。
兎にも角にも企画が悪い。
これです。すでに映像を撮る前から失敗が目に見えている、破綻した物語。それを限られた予算と制作期間内でフィルムにしなければならないなんて、想像しただけでもおぞましいですね。
日本邦画界きっての駄作「デビルマン」の再来とまで言われたテラフォーマーズの酷評ぶりは記憶に新しいでしょう。火星を舞台にした擬人化ゴキブリとのバイオレンスなバトルは、三池監督のお得意のするジャンルになり得たはずです。
しかし、どうにも脚本が悪い。原作漫画の内容を超特急ダイジェストに仕上げたのが、そもそもの間違いです。スターウォーズのエピソードを一時間半でまとめろって言ってるようなものですよ。
練りこまれた設定も、バックボーンの深い登場人物も何もありません。でも映画は撮影しなければいけない状況で、三池監督は腐らずによくメガホンを取ったと思います。
そして脚本が悪いのも、そもそもテラフォーマーズを実写化するな、という点に尽きるので諸悪の根源はOLMであり集英社であり、製作陣の頭の上にある大きなコブです。
つまり企画が悪い。
Netflixで三池監督作品を見るなら?
ハズレが9割のくじを引きたがる人はいないと思います。ただ三池監督と聞いただけで拒絶反応を示してしまうのは、かなり損をしているでしょう。
Netflixでもいくつか三池監督の手がけた作品が公開されていますが、とりあえず「ゼブラーマン」だけ見てください。あれこそが三池監督の真骨頂です。クドカン脚本との相性も抜群ですね。ユーモアに溢れています!
ただバイオレンスが皆無なので、そこを入り口に三池ワールドに足を踏み入れてみては?
Netflixで配信中の三池監督作品(2016年11月)
「喰女」「殺し屋1」「着信アリ」「ゼブラーマン」「悪の教典」「隣人13号」「一命」
「オーディション」「極道大戦争」「忍たま乱太郎」「神様の言うとおり」
「ブルース・ハープ」「龍が如く」
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