『マイ・オウン・マン』はそれほど有名で無い監督によるドキュメンタリー作品なのですが、いろんな意味で注目に値します。
まず目を引いたのが、制作総指揮が、エドワード・ノートンという点です。エドワード・ノートンといえば、古くはデビッド・フィンチャー監督の『ファイト・クラブ』や去年の『バードマン』でアカデミー賞の助演男優賞でもノミネートを果たした実力派俳優です。
そんなエドワード・ノートンが手がけた『マイ・オウン・マン』とはいったいどんな作品なのか!? さっそく内容をチェックしていきましょう。
『マイ・オウン・マン』はどんな映画?
監督・脚本・主演のデビッド・サンプリナー、あるいはサンプライナーと読むのかははっきりしませんが、そのデビッドは当年とって40才。
ですが、まだ自分がしっかりと男としての意識を持ててないのが悩みなんです。
最近では、女性の活躍がすさまじく、家庭でも男の存在感がますます希薄になってきた昨今、いくら生活の糧をもたらしていても、やれ稼ぎが少ないだの、家では責められる夫諸氏は多いのではないでしょうか?
そんな男子の共通の悩みをデビッドはどうやら抱えているようです。
そして、ついにデビッドの奥さんは男の子を身ごもり、デビッドの男としての沽券に危機が迫ります。自分でも頼りないと思ってるのに、息子までそんな頼りない男になってほしくないと、デビッドの不安は日ごと高まっていきます。
「男らしい態度を取る」と言う時、英語ではman upという動詞句を使いますが、まさにデビッドは今までの人生で拒絶しまくり、眠っていた「man up=男らしさ」と急に向き合うことになるわけです。
そこで、一念発起したデビッドは、ボーカル・レッスンに通い、週末にはハンティングにいそしんだりして、ボディ・トレーニングと同時にマインド・トレーニングにも励んでいくわけです。
しかし、そんな表面的な訓練をいくらしても、結局はうまくいってない父親との関係修復が鍵を握っているということに行き着くわけなんですが、再会した父親とキャッチ・ボールをしてもとんでもない暴投してしまうシーンなど、笑えます。
野球映画の名作『フィールド・オブ・ドリームス』でも、行き着くところは父親とのキャッチボールだったという美しい原風景を思い出してしまいますね。
主演、デビッド・サンプリナーについて
ところで、このデビッドさん、これが初めてのドキュメンタリーではないそうで、初のドキュメンタリーに“Dirty Work”という作品があって、これもなかなか気を引かれる内容です。
「汚ない仕事」というタイトルは、「わたしたちの目と鼻の先で起こっていながら、そういう人たちのおかげで日常生活成り立っているのに、みんなが目をそむけている職業」を指していて、具体的には
- 牛の精液を集める人
- 廃棄物処理タンクのポンプ作業員
- 遺体整復師(つまり、日本風に言えばおくりびとですね)
といった、人が嫌がる仕事をやっている3人の生活を追っています。
そういう人たちに目を向け、普通とは違う生い立ちを持つ彼らがその道に入った人生を通じて、われわれの生活を違った角度から見るという試みのドキュメンタリーです。
たとえば、おくりびとのバーナードはわれわれを死者から遠ざけるようにしている現代の葬儀業界の実態を吐露したり・・・彼らがその仕事に懸ける並々ならぬ情熱に触れれば、今までとは違った世の中への見方ができるようになるという趣向でした。
デビッド・はそんな味わい深い作品が得意な監督といえそうです。
「男らしさ」を考えるために見たい作品
さあ、そんなサンプリナーの『マイ・オウン・マン』は、わたしたちをどう男らしく、いえ女らしく、いえいえ場合によったらman=人間らしくさせてくれるのでしょうか?
普段は忘れているかもしれませんが、ある日突然、「男らしさ」って何だろう?と問われたら、あなたはどう答えますか?
「マイ・オウン・マン」を見て、一度じっくりと考えてみて下さい。
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