かっこいいガンアクション選手権が開催されたら、まず間違いなく上位にくるであろうガン=カタ。銃を意味するガンと日本語の型を組み合わせた造語で、映画リベ地温に登場する格闘術です。
映像を見ないとカッコ良さは伝わりませんが、wikiに専用ページが作られている時点で人気が推し量れますね。
低予算SFながらも名作に数えられている本作。アクション映画としても秀逸ですが、その舞台設定と話の主軸が反社会主義ドラマとして、なかなか考えさせられるんですよね。
感情を持てない世界に賛成?反対?
リベリオンは第三次世界大戦が起きた後に立ち上がった都市国家リブリア。先の戦争と同じことを繰り返さないよう、人間の感情が抑制される社会が形成されていました。
美術品ダメ。音楽ダメ。物語のある書籍もダメ。映画もダメ。多分Netflixもダメ。こんな窮屈な世界で感情違反者を取り締まるのが、特殊捜査官のグラマトン(クリスチャン・ベール)の役目です。
物語の途中からグラマトンは今の社会に疑問を抱き、反逆をする=リベリオン(反逆者)になるのはタイトルからも想像できますね。
最後は民衆も蜂起して未来へ向かうハッピーエンドなんですが、ちょっと待ってください。この感情を抑圧する為政者に対して、誰か理論的に異議を唱えられる人がいるでしょうか。
感情にどんな種類があるかを調べてみると、喜怒哀楽だけではなく実に40以上の種類が定義されています。確かに、これらを抑えれば争いごともなくなり世界は平和万々歳。格差もなくなる画一的な社会が出来上がりそうです。
別に私はマルクス主義に傾倒している血気盛んな昭和の学生でもなければ、ネオナチに変な憧れを抱く中二病患者でもありません。
しかし感情のない社会を完全に否定できるとは到底思えないのです。戦争も、犯罪もなくなる。これって、社会が目指すべき真の姿じゃないですか。
さぁ、皆さんで感情のない社会を作りましょう。優秀な指導者のもと、規律ある世界で生きるんです。
なんてね。
リベリオンの、よく分かる社会主義国家の失敗例
リベリオンの「感情のない社会」って、まんま社会主義の考え方ですね。ある種、その究極体と言っていいでしょう。
日本に貧富の差があるのはなぜか。それは日本が資本主義国家で、金持ちが優遇されるお国柄だからです。じゃあそのお金持ちと貧乏な人の差を埋めて、みんなで分け与えれば貧富の差は無くなるんじゃないだろうか。
ものすごーく簡単にいうと、社会主義ってこういうことですよね。でもお金持ちからすれば「なんで自分が稼いだ金を自分のものにできないんだ」と、当然の主張があるわけです。
そこに来て感情を抑制するというのは、非常に合理的。人権云々の話もありますが、そもそも社会主義国家における人権なんて、あってないようなものですからね。
しかも副次効果として戦争や諍いが起きないとなると、人間という種の保存に適しているような気さえしてきます。
それ、錯覚です。
人間がなぜ栄えたのか、については諸説あるものの概ね「知性が他の生物よりも優れていたから」と説明がつきます。有史よりはるか以前、人間の祖先となる生物は生き残るために頭をうんと捻りました。
では、どうして人間に知性が備わったのでしょうか。それは間違いなく感情が豊かだったからに他ありません。どうすればお腹いっぱいになれるか、どうすれば快適に過ごせるか、どうすれば悲しい思いをしなくて済むか、どうすれば幸福になれるか。感情こそ知性の発露です。
そして過ぎたる知性に自分たちが脅かされないよう、感情を抑える理性も備わりました。そうでなければ、非力で狡猾な人類は今頃滅亡していたかもしれません。
人類の繁栄は知性と、知性を支える複雑な感情が成した奇跡のようなものです。もし人類のほとんどが感情を抑えてしまうような事態になったら、衰退の一途を辿ってしまうでしょう。だって、誰もよりよい世界を作ろうとしないんですから当然ですよね。
だからリベリオンのリブリア党首って、相当アホだと思います。
まとめ
クリスチャン・ベールは「リベリオン」以降、アクション映画に出演することが多くなりました。アクション映画であっても、社会に対するメッセージ性の強い作品が存在することに気づいたからでしょうかね。
「リベリオン」がなかったら、私の大好きな映画「ダークナイト」にクリスチャン・ベールが出演していなかったかもしれない。そう考えるだけで、この映画には特別な思い入れがあります。
単純にガン=カタはカッコイイし、ショーン・ビーンは安定して死ぬし、先のように社会派ドラマとしても見応えあるしで、いろんな人にオススメしたい一作です。
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