とうとう明けてしまいました2017年。今年はさすがに明けないかなぁ、と思ったら案の定明けたので、謹んで新年の慶びを感じようと思います。
2017年をより良い一年にするため、兎にも角にもスタートダッシュが大切。おみくじは大吉を引いて、美味しいものを食べて、映画も良作を見る!
今回紹介するのは、2017年をハッピーにすること間違いなしの映画「鍵泥棒のメソッド」です。
笑いと感動が一度に楽しめるナイスな映画なので、新年にぴったり!
あらすじ
貧乏ながらも役者として大成する夢を追う桜井(堺雅人)は、あることがキッカケで自殺を図るも未遂に終わる。時を同じくして出版社で雑誌の編集長を務める香苗(広末涼子)は相手もいないのに結婚の予定を立て、急いで婚活を始めた。
自殺に失敗した桜井は気分を変えようと銭湯へ行き、そこで転倒事故に遭遇する。倒れた男(香川照之)のロッカールームの鍵をドサクサに紛れて盗むと、思いもよらない大金が手に入った。病院へ搬送された男は大きな怪我がなかったものの、記憶を無くしてしまう。桜井が鍵を盗んだ際に自分の鍵と入れ替えていたため、男は自分を桜井という男だと勘違いしたまま退院する。
男が病院の外に出ると、父の見舞いに来ていた香苗と運命的な出会いを果たす。
一方、本物の桜井は裏世界の人間と接触する羽目になり…。
鍵泥棒のメソッドは、文字どおり面白い映画の方式に則っている!
映画における面白さというのは、本当に複雑怪奇です。頭をすっからかんにして視聴できるアクションコメディのような面白さもあれば、先が気になって没入していくミステリーのような面白さ。全く違うジャンルでも、感じる部分は全く異なります。
予算と時間をかければ秀作が完成するわけでもないし、チープな造りでも名作はちゃんと存在し、面白さの基準とは本当に曖昧なもの。しかし全ての映画において、面白さの鍵は共通していると思います。その鍵とは「観客の目線を意識している」ことです。
映画の演出や伏線を見た観客が何を感じ、どう記憶し、何を期待するのかを想像して作った映画とそうでない映画は一目瞭然。人間って、視覚から得る情報が一番多いんですよ。
マジックを例にすると分かりやすいんですが、あれっていかに観客の視線を操作するかが大切ですよね。マジシャンの動きに対して、観客はどこを注目するかちゃーんと計算して、観客が騙されてマジックを楽しめるように仕向けているから面白い。そうでないと、白けてしまいますから。
「鍵泥棒のメソッド」は設定の段階から観客に向けて様々な仕掛けを施しており、それが終盤にかけてカチッとハマるのがとても気持ちよくなる作品です。
例えば「様々な嗜好品を扱う雑誌の編集長」という香苗の設定。これが物語の終盤、ピンチに陥った桜井たちを救います。それまで観客は編集長というポストにいる香苗を「婚期が遅れたキャリアウーマン」「仕事熱心で博識」という目線で彼女を観ていたため、その活躍ぶりに驚かされるのです。
それはもともと香苗の父が身の回りの物を一級品に統一していたことが繋がり、それ故に記憶をなくしていた男に惹かれ、それ故に男が記憶を取り戻し、なぜ取り戻したのか映像の一部にチラリと映す…観客に与えた情報が余すことなく使われ連綿と続いていくのは、清流のような美しさがあります。そして人はこういった作品を面白い、と感じるのです。
特に秀逸なのはラスト。セリフで愛を告白するのではなく、あるアイテムを使って気持ちを確かめるというニクい仕掛けがたまりません。そのアイテムとは劇中で何度も目にするもの。素晴らしいとしか言いようがないですね。
俳優陣たちの名演から生まれる良質な笑い!
映画で笑って2017年をハッピーにしよう、と言っても下ネタとか蔑みで笑わせるのって何か違うじゃないですか。やっぱり誰も不幸にならない笑いこそ、新年に相応しいですよね。
それこそ「鍵泥棒のメソッド」はピッタリだと思います。記憶をなくした香川照之がワイシャツにジーンズをねじ込んで歩く姿や、悪気なく部下の旦那を貶してしまう様、大河であんなにカッコよかった堺雅人の大根役者風の演技。
俳優陣たちのコミカルな熱演は映画界でも高く評価され、その年の日本アカデミー賞のうち「優秀主演男優賞」「優秀助演男優賞」「優秀助演女優賞」を受賞しています。これだけでも一見の価値ありだと思いますよ。
まとめ
新春の頭からNetflixでなんの映画を観ようか。地雷覚悟のB級を攻めるか、はたまた過去に観たことがある安牌を放るか。結果としてこの映画に出会えたのはとてもラッキーでした。
一時期は斜に構えて「邦画なんて」と斜に構えていたこともあった私ですが、一周回って今は邦画LOVEですね。日本人の心に響く作品が、まだまだ世の中にはたくさんあります。2017年は邦画を堪能する一年にしたい。鍵泥棒のメソッドは、そんな映画観を与えてくれる良作です。ぜひ、一度ご覧ください。
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