犯罪者たちの頂上決戦
この世で一番強い犯罪者は誰だ?
子供じみた疑問ですが、ここは真剣に考えてみてください。
緻密な計算と入念な武装をした強盗集団か。姑息な手を使う悪質なカルテルか。はたまた予測不能の行動に出るシリアルキラーか。
「強盗狩り」は犯罪者たちを貸金庫という舞台にぶち込んだ、いわば闇鍋のような映画です。
例のごとくネットで前情報を仕入れようと検索しても、一切タイトルが引っかかりません。トップに出てきたのはオヤジ狩りでした。
おそらく日本で初めてこの映画のレビューすることになるのではないでしょうか。
あらすじ
強盗に押し入った一味が人質を取り、順調にブツを回収していると目玉キラーと呼ばれる猟奇殺人犯と鉢合わせ、バイオレンスで胸糞の悪い殺し合いをするといったもの。
強盗団のリーダーであるポールは退役軍人。切れ者で計画性もあり、警察との駆け引きにも長けた犯罪のプロです。
対する目玉キラーは、何のバッグボーンもない中年男性。銃器の扱いに小慣れた強盗たちを圧倒します。
そして第三の犯罪者集団として登場するカルテルはFBIに扮して、貸金庫にカチコミ。もう収集つかない事態ですが、目玉キラーの前では赤子も同然。
一介の殺人鬼が、いわば犯罪や殺しのプロを相手取って常に狩る側というのはかなり無理がありますね。
全体的に破綻していると言わざるをえません。
中でも「そりゃないだろ!」と思わず突っ込んでしまう場面をランキング形式でご紹介しましょう。
「強盗狩り」のツッコむのが礼儀とすら思える場面ランキング
第3位「相手の素性を調べない無能のLA警察」
もし、あなたが警官だとして「FBIだ。事件の指揮は我々が執る」と息巻いてきた連中が来たら何をしますか?
そんな横暴な!とか文句を言う前に、まずは身分を明かせって話ですよね。
しかしLA警察はそんな野暮なマネをしません。
急遽やってきたFBIを名乗る4人組に対し何の疑念も抱かず仕事を横取りされた程度にしか思わないのです。
そんな警察に街の安全を託すLA市民の心情は察するに余りあります。
第2位「不死身の目玉キラー」
この映画のキーマンとなる殺人鬼、目玉キラー。強盗団を混乱の渦に陥れる狂気の所業は見ている我々も恐怖を覚えます。
同じ人間なのに、ここまでヒドイことができるのか?と目を覆いたくなるシーンですが、映画のラストでそれは台無しになります。
そもそも目玉キラーは神の啓示だ、とか並び立てて目玉を集めるイっちゃってるおじさん。
この変哲もないおじさんが狂気に走ることが映画において効果的な演出となっています。
しかし映画の終盤、首を刺され目玉キラーはとうとう終焉を迎えました。
が、実は生きていたという展開には正直萎え萎えです。
ケロリと蘇り、きっちり最後まで生き残るのは現実味のある話が突然ファンタジーになったような違和感。
フレディじゃないんだから、やはり素直に死んでほしかった。
映画を見ればわかると思いますが、首をざくっとやられているので普通の人間なら死んでおかしくないんですよ。
やっちゃいましたね「強盗狩り」。
第1位「俗っぽい目玉キラー」
またもや目玉キラーです。もう彼には失望しました。
映画の本当に最後、唯一生き残った目玉マニアのおじさんは最後とんでもない暴挙に出ます。
強盗団やカルテルがこぞって我が手にしようとした債券を丸々持て帰っていくところで映画はエンディングを迎えました。
おじさん、神だなんだと並べておきながら美味しいところはきっちり持っていきます。
そういう俗っぽい価値観を持ってしまった時点で殺人鬼としての魅力は半減。
ダークナイトのジョーカーを見てください。札束をガソリンで燃やして喜ぶような奇人変人ぶりが、悪役としての味を一層引き立てているんです。
悪役像としては何とも中途半端で、本当の意味で後味の悪い映画に仕上がってしまいました。
以上が私の思う「強盗狩り」のツッコむのが礼儀とすら思える場面ランキングです。
映画のキャラクター作りに失敗した「強盗狩り」
脚本、悪くない。アクション、悪くない。演出、悪くない。
ただキャラクターが薄味なせいで映画としての面白さを地に落としてしまった「強盗狩り」。
目玉キラー以外の登場人物もイマイチ造形が甘く、これでは映画に入り込むことはできません。
放映時間が1時間半と、サスペンスでは致命的な短さ故の弊害でしょう。
一番バックストーリーが語られたポールのあっけない退場は本当にもったいない。
奇をてらうのと期待を裏切るのは似て非なるものです。
と、なんだか批判的な内容になってしまいましたが1時間半でサクッと見られるため空いた時間などにはぴったり。
見終わった後の消化不良は如何ともし難いですが、ダメな映画ってなんだろうというイイお手本なので、見ておくと今後いろんな作品を見る目が変わるかもしれません。
Netflixでひっそりと配信中です。
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