『ペイ・フォワード (Pay it forward) 可能の王国』世界を良くすべく、今こそ見ておきたい名作

Pay it forward
本日は、少し古い映画ですが、Netflixで配信されている(個人的に名作と思う)作品をご紹介します。

それは、2000年にアメリカで公開された当時、Oscar baitだとさんざん叩かれた『ペイ・フォワード 可能の王国』という作品です。

Oscar baitって、「オスカーを獲るための餌まき」っていう意味で使われる英語なんですが、ずっとその言葉が気になってました。確かにアカデミー賞ではノミネーションさえされず、無冠に終わりましたね。

批評家の間では評判の悪かったこの映画ですが、ただ、映画批評サイトのRotten Tomatoesでは、評論家サイドの評価は40%でトマトの表示も腐った色である一方、一般観客の評価は74%と高く、低い時表示のポップコーンはこぼれておりますが、ポップコーンが容器になみなみとつがれた表示になっています。

まぁ、細かいことはさておき、頭でっかちの評論家諸氏が酷評している映画でも、われら一般人が見ると案外おもしろいってことありません? そのいい例がこの映画だと思うのです。

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『ペイ・フォワード 可能の王国』

日本のタイトルは、ペイ・フォワードですが、「可能の王国」という副題がついているものの、日本人にはちょっとピンとこない言葉ですよね。

原題にもあるように、正式な英語ではPay It Forwardで、pay it forwardという表現は結構古くからあって、「事前にお返しする」というような意味なのです。

「事前にお返しする」って変でしょ? まあ、一種の先払いということですが、普通、「払う」というのは何かを買ったり、何かをしてもらってのお返しですよね。

そう、あなたが誰かに助けてもらったりとか、何か善行を施してもらったとしたら、それをその人に返すのがpay backですが、それとは別の方向(backと逆のforward)に、つまり、何かしてくれた人ではなく、誰か他の人にお返ししなさいというのがアメリカでは、pay it forwardという表現の基本的な考え方です。

これは、実は、古くからある考え方なのです。Pay it forward to somebody.と言い換えたほうが分かりやすいかもしれませんね。

アメリカの独立に多大な貢献をした、あの凧を上げで有名なベンジャミン・フランクリンも、SF小説の大家ロバート・A・ハインラインもそのお弟子さん的なレイ・ブラッドベリも、あのジョン・F・ケネディ元大統領も似たようなことを言っております。

同じような考え方は日本にもあった

でも、この考え方は、日本にも古くからあったようです。日本では「恩送り」というそうで、恩送りが元になっている昔からのことわざに「情けは人のためならず」というのがあります。

しかし、このことわざ、情けは人のためにならないから、人には親切にするもんじゃないと受け取っている日本人がほとんどなのではないでしょうか? しかし、実はまったく正反対で、「情けはいずれ巡り巡って自分のところに返ってくるから、人には親切にしておいたほうがいい」という意味の、誤解されてる表現だったんです。

また、似たような考え方に「六次の隔たり」というのがあって、ちょっとむずかしそうに聞こえますが、書いてしまえば簡単なことで、友達の友達・・・その友達の友達・・・というふうにやっていくと、世界というのは六人の隔たりしかなく、「世間って案外狭いよんだよね」的な考えのことです。

「六次の隔たり」というのは、この言葉を考え出したジョン・グエアという劇作家が自分で映画用に脚色した『私に近い6人の他人』というストッカード・チャニング主演のハリウッド映画にもなっています。

本作品のみどころ

さてさて、前置きが長くなってしまいましたが、肝心な内容のさわりだけでも触れておきましょう。

ある中学一年生の少年トレバーが(あの『シックス・センス』の子役で有名になったハーレイ・ジョエル・オスメント君)、社会科の授業で、先生に「もし自分の力で世界をよくするには何をする? それが君たちへの宿題だ」と言われ、自分が受けた善意や思いやりをその相手に返すのではなく、「何もされていない他の3人に返そう」というアイディアを思いつくのです。

この3というのがポイントで、3だとネズミ算式に増えていくところが斬新で天才的です。

Pay it forward

シモネットという先生役をやってるのが、前年の2000年に『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞主演男優賞を獲っているケヴィン・スペイシー。「目の芝居」のうまい人です。

Netflixのファンならご存知、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の人ですね。このシモネット先生は、顔から首、そして体全体にひどい火傷の傷跡があって、これがまず観る人の心をどきっとさせるんですが、どうしてそんな火傷を負ったのか、それもこのドラマの重要な要素になってきます。

トレバー君の出したアイディアでやや人間嫌いのシモネット先生が次第に心を開き、じわじわとトレバー君の生活の中で大きな存在となっていくというのも、このヒューマン・ドラマの大きな柱です。

というのもトレバー君の3つの善行のうち、ペイ・フォワード作戦の一つが、アルコール依存症の母親とシモネット先生をくっつけ、自分の「新しいお父さん」にしようということなのですが、これがまた子供らしい。

母親のアーリーンを演じているのは『恋愛小説家』でアカデミー賞主演女優賞を獲っている実力派のヘレン・ハントです。どこにでもいそうな “woman next door” をやらせるとうまい女優さんですね。この人がいかにもアル中っぽく見せてくれるので、飲んじゃダメだよとハラハラさせてくれます。

さあ、トレバー君の作戦は成功するのでしょうか?

社会的な活動に発展した “Pay It Forward”

6人に親切を実行するよりも、3人ぐらいなら何とかなりそうじゃないですか。

この映画をきっかけにして、ペイ・イット・フォワードという財団まで設立されて、この映画の考え方を学校で広める活動をしてるとか。さらに、オーストラリアの声がけで、国際ペイ・イット・フォワード・デイという日ができて、現在75か国が加盟して、日本も加盟してるそうです。今年は4月28日だそうです!

先の「六次の隔たり」のような考え方を、社会心理学では、世間って狭いねの意味で、スモール・ワールド現象と言うそうで、スマホなどでみんながやってる SNS も、実は、この原理を土台にしてるんだそうです。

パソコンまたはスマホ、Netflix、『ペイ・フォワード 可能の王国』・・・この「三」次の隔たりで映画を観て、どうでしょう、われわれも世界を小さくしようではありませんか!

いや、熊本やエクアドルで大地震があった今この時期だからこそ、この映画は少しでも多くの人に観てほしいですね。この映画を観たら、熊本に向けてペイ・イット・フォワードする人がもっと増えるかもしれません!!

いや、フォワードというぐらいで、みなさんは観る「前に」してるでしょうけどね!

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