本当にあった戦場の話「ブラック・ホーク・ダウン」

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これは紛れもない衝撃の実話である

ソマリアの街で米軍の兵士が無残に殺され、痛めつけられた遺体が市中を引きずり回される衝撃の映像。アメリカのニュース番組が大々的に報じ、全米を、そして世界を震撼させました。1993年のことでした。

映画「ブラック・ホーク・ダウン」は米軍の戦術方針に多大な影響を与え、今なおアメリカの軍事史で悲劇として伝えられるモガディッシュの戦闘を描いた作品です。

ソマリアの内戦に介入した米国は後に撤退する際、この戦闘を理由の一つに挙げていました。わずか30分で終了するはずの作戦がなぜ15時間にも及び、なぜ米軍に甚大な被害をもたらしたのか克明に描かれています。

ショッキングな描写も多く、思わず目を背けたくなる場面もあります。監督のリドリー・スコットは徹底的にリアリティを追求しました。

原作者のマーク・ボウデンは撮影の際、実際に現場へ赴いたそうです。彼は実際にモガディッシュの戦いを生還した一人で、あまりにも忠実に再現された現場の雰囲気に当時の記憶がフラッシュバックしたそうです。

ここまで忠実に再現したリドリー・スコット監督が映画を通じて何を伝えたかったのか。私なりに考察してみようと思います。

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印象的なラストシーン

映画の冒頭は希望に溢れたものでした。ジョシュ・ハートネット演じるエヴァーズマン軍曹は、理想に燃える若きレンジャー隊員。ソマリアの平和のため、自らの意思でこの戦闘に参加したと理想を燃やします。

そんな彼を待ち受けていたのは過酷な現実でした。混乱の中で行われる戦闘、作戦の失敗、友人の死。エヴァーズマン軍曹の理想は悉く打ち砕かれていったのです。

命からがら帰還した彼は、この戦闘に疑問を抱きます。そして再び戦場へと戻ろうとするデルタフォースのフート軍曹に「戻るのか」と問いかけました。

フート軍曹は答えます。

「皆が俺に聞く

“フート なぜ戦うんだ”? “どうして?” “戦争中毒なのか?”と

俺は何も答えない

連中にはわからないからさ

なぜ俺たちが戦うか

俺たちは仲間のために戦うんだ

そうとも

それだけさ

この言葉に集約されているのは、まさに兵士としての矜持です。思想や理念、個人の心情が戦争に影響を及ぼすことはありません。エヴァーズマン軍曹の言う「ソマリアの平和」は決して一兵士の力で叶うものではなく、ましてや戦争によってもたらされるものではないのです。

それでも戦う理由があるとしたら、それは共に戦場へ向かった仲間のため。それ以外に形容できない兵士のやりきれない思いが、このシーンに集約されていると思います。

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時代を超えても色褪せない悲劇

「ブラック・ホーク・ダウン」は劇中のほとんどが戦闘シーンで構成されています。

それを単調で退屈という批評家がいるのも事実です。

しかしエンターテイメント性を持たせるために史実に背いたドラマを盛り込んだり、アメリカのプロパガンダとして喧伝される多くの映画とは違う、戦場の空気と兵士たちの現実がこの映画にはあります。

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